症候性脱毛症とは、何らかの原因疾患があるために脱毛が起きてしまう脱毛症のことです。
髪の毛は通常、成長期、退行期、休止期を周期的に繰り返して生え変わっていきます。成長期が長いと長い毛となり、逆に成長期が短ければ、短い毛となります。そして、成長期の長さは年齢や性別、体の部位によって違ってきます。
このヘアサイクル(毛周期)に乱れがあると、毛が抜けてしまいます。そして、休止期の毛が増えることにより毛が少なくなるのが、休止期脱毛症です。内分泌疾患、栄養不足、妊娠、薬剤の影響などにより休止期脱毛症になることがあります。
症候性脱毛症の原因
甲状腺ホルモンは毛周期に影響を与えており、甲状腺の疾患があると成長期の毛に対して休止期の毛の割合が多くなり、休止期脱毛症になります。
また、低栄養状態によって毛が抜ける場合もあります。蛋白質やカロリー、ミネラル、ビタミンなどが欠乏することで、抜け毛が発症します。この抜け毛は、栄養が不足している発展途上国の乳幼児に多くみられる症状です。日本では、神経性の食欲不振症(拒食症)の患者さんにみられることがあります。
また、消化器系の疾患がある場合、摂取した栄養素がしっかりと吸収できずに、栄養不足となり休止期脱毛症になることがあります。
薬剤使用中に毛が抜け、頭の毛が薄くなることがあります。中でも、抗がん薬の使用による副作用で脱毛が起こることは有名です。この副作用による脱毛は、休止期脱毛ではなく「成長期脱毛」です。抗がん薬による脱毛症では成長期の毛が障害を受け、毛が伸びなくなり、抜け落ちてしまうのです。
他にも、抗がん薬以外の多くの薬剤が休止期脱毛の原因になります。休止期脱毛の原因になりやすい薬剤としてはヘパリンおよびその類似物質、インターフェロン‐α(アルファ)、エトレチネート、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどがあります。
症候性脱毛症の症状
頭の毛が1日に50〜100本抜けて休止期になるのは、正常範囲内といえます(1日の抜毛の本数)。しかし、それ以上に毛が抜ける場合は、休止期脱毛症の可能性があります。休止期脱毛症では、頭部にびまん性の脱毛が現れます。また、髪の毛だけでなく、腋毛(えきもう)や陰毛が抜けることもあります。
低栄養状態による脱毛症では、脱毛以外に栄養不足を示す「痩せ」や皮膚炎などの症状も伴います。
抗がん薬による脱毛は、薬剤投与後1〜4週間後に現れます。また、抗がん薬以外の薬剤性脱毛症では、薬剤投与後2〜4カ月後に脱毛が現れます。
症候性脱毛症の治療と予防・対策
甲状腺の疾患が疑われる時は血中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの量を測定します。そして、甲状腺機能に異常がある時は、甲状腺疾患の治療を行います。
低栄養状態がある時は、栄養素の補充(点滴など)を行います。消化器系の疾患による栄養素不足の場合は、まずは基礎になる疾患の治療を行い、並行して消化吸収に配慮した食事治療を行います。