発毛作用が医学的に認められている成分は、フィナステリドとミノキシジルの2種類のみです。そして、ミノキシジルを配合した育毛剤には、ロゲインやポラリス、カークランド、日本ではリアップが有名です。
ミノキシジルは、元々は血管拡張剤の一種(高血圧の経口薬)として開発されたものですが、服用した患者に「多毛症」と呼ばれる副作用が発生。この副作用を研究し、薄毛治療のための育毛剤として開発されたのが、先ほど紹介した育毛剤です。
これらの育毛剤はいずれも「塗るタイプ」の育毛剤なのですが、近年では「飲む育毛剤」も開発され、日本でもAGAの治療を専門とするクリニックや病院等で処方されるようになっています。
ミノキシジル配合のタブレットタイプ(通称ミノタブ)
冒頭でも説明したように、現在においてもミノキシジルは頭に直接塗るタイプが主流です。しかし、同様の育毛成分を含むタブレット(錠剤)タイプが開発され、薄毛治療に新たな選択肢が加わる事になります。
ロゲインやポラリス、リアップ等のミノキシジル配合の外用溶液を頭皮に塗布することで、頭皮周りの血管を拡張して発毛を促すのが「塗るタイプ」の育毛剤の作用です。そして、ミノキシジルを有効成分とした錠剤(タブレット)を服用するのが「飲むタイプ」の育毛剤となります。
頭皮に塗る場合に比べて、内側から有効成分を頭皮に行き渡らせることができるため、塗るタイプよりも作用が強いという特徴があります。しかし、それだけ副作用も強くなるため、AGA治療を行っている病院によっては処方されない(体質によっては利用できない)こともあるようです。
育毛活動に詳しい人たちの間では、ミノキシジルタブレットは「ミノタブ」と呼ばれており、同じく発毛作用の高いフィナステリドと並んで、薄毛改善のための「切り札」として利用されるに至っています。
ミノキシジルタブレットのメリット(効果・作用)
タブレットタイプの育毛剤のメリットとしては、塗るタイプに比べてより高い発毛作用が得られる点です。服用することでミノキシジルの成分は全身へと運ばれます。運ばれた有効成分は頭皮の毛細血管にまで行き渡り、血管の拡張作用は毛根に伸びる血管にまで及びます。
血行不良等により、十分な栄養素が運ばれなくなった毛根(毛包)では、丈夫な髪の毛は生えてきません。しかし、ミノキシジルによって血管が拡張されると、新鮮な酸素や十分な栄養素が毛根まで運ばれます。この一連のプロセスによって、「ディープグロース効果(毛包を大きく深くする作用)」が発生し、細く軟毛化した毛髪を太くて切れにくい丈夫な毛に成長させます。
この作用は塗るタイプでも同様ですが、塗るだけでは成分は中々皮膚の中へ浸透しません。言い換えるならば、塗るタイプは遅効性であり、飲むタイプは即効性があるということになりますね。
また、塗るタイプに比べて運用が非常に手軽であるという点もメリットになります。ロゲインやポラリス、リアップであれば、毎日頭皮へ塗布する必要があります。慣れてくれば大きな問題ではないのですが、ものぐさな人であれば途中で運用をやめてしまう場合もあります。
錠剤であれば、決められた量を飲むだけで良いので、頭皮に塗布した液体が垂れてきたり、枕や布団に付着するといったこともありません。塗るタイプがどうしても肌に合わない(かぶれや炎症が発生する)という人であっても、タブレットタイプであれば問題なく利用できるという方も多く、ミノタブによって育毛活動の幅が広がったことは間違いありません。
ミノキシジルタブレットのデメリット(副作用)
ミノキシジルタブレットは、塗るタイプの育毛剤よりも強い作用があります。作用が強いということは、それだけ「副作用」も強く発生します。強い発毛作用ばかりに目が行ってしまいますが、錠剤を服用することによる副作用にも十分注意しなければなりません。
体毛が濃くなる
ミノタブの副作用として最も多く報告されているのが、全身の体毛が濃くなるという副作用です。ミノキシジルが育毛剤に利用されるに至った経緯を見てもこれは当然の副作用ですし、だからこそ髪の毛も生えてくるわけです。
しかし、この副作用は全身の体毛が薄い人にとっては軽微なものかもしれませんが、元々体毛が濃い人にとっては、さらに悩みを一つ増やしてしまう結果になります。そうならないためにも、ミノタブによってどの様な症状が体に現れるのかを知っておくことは非常に重要というわけです。
重い低血圧の人は利用出来ない
ミノキシジルは、元々は血管を拡張させて高血圧を改善するために開発された成分です。高血圧の原因は様々ですが、血圧が高いままだと体の様々な部位に悪影響を及ぼしてしまいます。その高血圧に対し、ミノキシジルは優れた血圧降下作用を発揮します。
しかし、血圧が正常な人であればまだしも、元々の血圧が低い「低血圧」の人が服用してしまうと、血圧はさらに低下してしまいます。血圧が低下することで発生する主な症状は、めまいや立ちくらみ、頭痛や冷え性、不眠、食欲不振等があり、重いものだと気を失ってしまうものまでありますが、「高血圧に比べて低血圧はさほど問題がない」という認識もあり、あまり話題にあがることも少ないようです。
ただし、それはあくまで程度の軽い低血圧であって、重篤な低血圧を抱えている人にとっては、ミノキシジルの作用は危険なものとなります。血圧が下がり過ぎることで、急性低血圧症を併発したり、ショック症状や意識障害、四肢の痺れなどを引き起こす可能性もあります。
低血圧による重たい症状は稀ではあるのですが、その様な危険性も0ではないということを知っておかなければなりません。また、他の降圧剤を利用している人も同様に利用できない可能性が高いです。
臓器への副作用
以下の副作用は、アメリカ食品医薬品局(FDA:日本の厚生労働省にあたる機関)にて報告されたものです。ミノキシジルを内服薬として服用した際に起こる、重篤な副作用です。
- 心室肥大・・・心臓下部の空間や心室が大きくなる症状。
- 心外膜液に対する影響・・・心臓と心臓を覆う袋(壁側心膜)の間にある液体。鼓動による摩擦を軽減する。
- 腎性全身性線維症・・・皮膚が腫れたり硬くなったりして手足が動かせなくなる病気。
- 高カリウム血症・・・血中のカリウム濃度が高まり、手足の腫れや不整脈・頻脈・筋力の低下、吐き気が起こる。
- 多臓器不全・・・生命維持に必要な複数の臓器の機能が障害された状態のこと。
- 不整脈等
その他の副作用
他にも、軽微な副作用としては、
- 体重増加
- 胸の痛み
- 浮腫下肢(足のむくみ)
- 顔浮腫(顔のむくみ)
等が報告されています。これらの副作用は「服用」に関する副作用ですが、塗る場合でも成分は頭皮から吸収され、微量であっても全身に影響する可能性は0ではありません。尚、ミノキシジルを外用薬として利用した場合は、以下の様な副作用が確認されています。
- 薬液の使用箇所におけるニキビの発生
- 頭痛、意識朦朧
- 多毛症
- 性的不能
- 重い低血圧
- 不整脈、動悸
- 皮膚の紅潮
- 霞み目
- 手、足、顔のしびれや痛み
- 性欲減退
- 胸の痛み
- 急速な体重増加
- 下肢、手、足、顔のむくみ
文面だけ見ていると、メリットよりもデメリット(副作用)の方が目につくと思います。フィナステリドにしてもそうですが、全身に作用するということは、それだけ副作用も強く出るということです。
健康あっての髪の毛
これらの副作用を良く理解した上で薄毛の治療薬としてミノタブを利用している人も多く、発毛作用に満足しているという人も少なくありません。ただし、ミノキシジルタブレットによる薄毛治療は、専門のクリニックや病院で診察を受けて、服用に際して問題が無いという判断の元で行われるものです。
個人輸入によってプロペシアもミノタブも安価に購入できる時代となりましたが、何も知らずにいきなり服用することは非常に危険です。まずは医師の診断を受けて、自分の薄毛と体の状態にしっかりとマッチした治療法を選択して、安全・確実に治療を行っていくことが何よりも大切です。
髪の毛を取り戻したとしても、健康を失ってしまえば意味がありませんからね。